相続放棄をする理由について

文責:所長 弁護士 白方 太郎

最終更新日:2021年01月02日

1 相続放棄の理由は限定されていない

 相続放棄をする理由や動機には制限はなく、広く認められています。

 条文上も、相続放棄の申述手続きを形式的に満たしていれば認められることになっています。

 (もちろん、自己の意思に反して相続放棄の申述をさせられている場合は別です)

 相続放棄をする理由のうち、最も典型的なものは、被相続人に資産がなく,負債のみがあった場合(債務超過)などが相続放棄をする理由の典型的なものですが、生前に充分な贈与を受けており相続財産を取得すると他の相続人との均衡を保てない場合や,先祖代々の土地を守るため特定の相続人に遺産を集中させたい場合,あるいは、諸事情により他の相続人や親族と関わりたくない場合であっても、相続放棄の手続を行うことはできます。

2 プラスの財産より負債の方が多い

 相続放棄の理由として、最もよく見かけるのが、債務超過です。

 端的に申せば、プラスの財産よりも負債の方が多く、相続をすると財産的に損をしてしまう場合です。

 現実的には、被相続人の方が生活保護等を受けられていて、財産と呼べるものはほとんどなく、負債のみが存在するというパターンが多いです。

 負債の種類はさまざまです。

 被相続人がクレジットカード会社や消費者金融に借入をしていたケースが最も多いですが,意外と多いのは税金や社会保険料を滞納していたケースや,知人の連帯保証人になっていたケースなどもあります。

 ちなみに、税金に関する債務を相続してしまうと自己破産をしても免れられないこともありますが、相続放棄であれば免れることができます。

 被相続人の負債については、詳細を調査しなくても相続放棄ができます。

 むしろ、疎遠であった被相続人の財政状況を調査するのは困難であり、どこにどれだけの負債を有しているかがわからないということの方が多いです。

 そのため、「多額の負債を有しているおそれがある」という理由で相続放棄の申述をすることもよくあります。

3 生前贈与を受けている

 被相続人の生前に、贈与を受けている場合,他の相続人との均衡を保つため,贈与を受けている人が相続放棄をするということがあります。

 相続放棄をすることで、他の相続人の感情面に配慮することができます。

 その他、被相続人がプラスの財産と多額の負債の両方を有している場合、生前に財産のみ贈与し、死亡後に相続放棄をして負債を免れるということも理論上は可能ですが、詐害行為取消権行使の対象になり得ることもあるため、注意が必要です。

4 財産を集中させる

 主に地方都市などにおいて見られるケースですが、相続人の大半が大都市圏へ出てしまい、家業を継ぐ相続人が1人しかいないというような場合において、自宅土地建物含む全ての財産(負債も含む)をその相続人に集中させるという考えのもとで,その他の相続人全てが相続放棄をするということもあります。

 敢えて裁判所を通じた相続放棄手続をする理由は、負債の集約にあります。

 プラスの財産については、遺産分割協議において、他の相続人が取得しない旨を記載することで相続放棄と同じような効果を発生させることができます。

 しかし、負債がある場合には、債権者と交渉し、免責的債務引受契約を締結することで特定の相続人に債務を集約しなければならないという煩雑さがありますので,相続放棄の方が確実かつ簡便に実現できます。

5 相続関係からの離脱

 諸事情により家族と疎遠になってしまい相続に関わる気がない場合や、性格的に問題がある(あるいは精神的な疾患により話合いが成り立たない)相続人がおりトラブルを回避したい場合,あるいは、被相続人が再婚をして別の家庭を持っているため相続に関与しないでおきたい場合にも相続放棄手続を使うことができます。

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